よしむら農園 想い

退職後夫婦で取組む有機農業

 きれいな湖。昔ながらの小川。そこで獲れる魚や農産物のおいしい関係。太古の昔から続いていた循環と共生を取り戻したい。これが私の有機農業の始まりでした。

 私の住む福井県若狭町は、万葉集にも詠われた風光明媚な所で、ラムサール条約に登録された三方五湖があります。しかし、私が20代の頃、汚染が問題となっておりました。

 農家の長男として生まれた私は、高校卒業後地元農協に就職し、父と母の3人で2ha余りの田畑を耕作していました。農家のためにと37年間一生懸命働いてまいりましたが、有機農業の大切さを感じながらも、農協の中では取り組むことはできませんでした。

 平成15年定年を迎え、本当にやりたい農業を本格的に始めることができました。妻もその頃長年勤めた保育士の仕事を退職したため、夫婦仲良く楽しみながら農業に取組もうと、「楽しく農業をし、田舎を見て・遊び・料理しておいしく戴き・楽しめる仲間を増やす」という目標を立てました。

 そして、私は農作業やHP、妻は営業や農作業の補助と分担を決め、家族経営協定を結び、共同申請で認定農業者になりました。

湖を汚さない、農薬を使わない農業

 私は中学生になると、農薬に弱い母に代わり父と一緒に農薬散布をしていました。散布後は、体調が悪くなり横になっていました。それは、年を追う毎にひどくなりましたが、農薬を使わなければ絶対にお米は獲れないと思い込んでいたので、辛抱していました。

 一方、昭和41年私が就職した頃、三方五湖は悪臭やアオコの発生が問題となり、青年団活動で水質調査などをしました。

 その後、私が参加した「まちづくり委員会」でも湖の浄化がテーマとなり、何とかしたいと一晩中話し合いました。平成6年、仲間と会を立ち上げ、湖周辺のゴミ拾いや生ゴミの肥料化を始めました。

 この仲間の一人が、湖を汚さない農業、つまり化学肥料や農薬を使わない有機農業にグループで取り組んでいたのです。「私もやってみたい」と、すぐに入れてもらい、微生物を利用した栽培方法を学びました。

 平成10年、ようやく始めた有機農業の1年目は、惨憺たる状況でした。田んぼ一面雑草だらけ。ヒエ、コナギ、セリなど今まで田んぼでは見たことのない雑草が、わんさと生えました。手間が沢山かかったのに、米は例年の半分も獲れず、「草取りに来てくれた従兄弟や友達に申し訳ない」「これはとても続けられない」と落ち込みました。

 しかし、仲間の激励に支えられ、希望を持って挑戦し、2年目からは目標の反当り7俵が穫れ、本当に嬉しく、「これからの農業はこの方法でいこう」と思いました。25aから少しずつ面積を増やし、今は米2.2ha梅30aになりました。夫婦2人ではこれが精一杯です。

楽しい農業!アイガモ農法

 アイガモ農法の出会いは、有機農業を始めて2年目に偶然見たテレビ番組でした。稲の周りをアイガモがすいすい泳ぎ、草をついばむ姿が愛らしくてたまらず、直ぐに取り組んでいる人を探しました。隣町におられ、早速出向いて教えていただき、アイガモに目の届く自宅の横の田んぼで始めました。

 アイガモを外敵から守るために、田んぼの回りに網や電気柵を取り付けるのは結構な手間でした。また、小さい雛の世話も慣れないうちは大変でした。それでも、翌年にはこれは行けると確信を持ち、アイガモ農法全国組織に入り、情報交換を始めました。

子供たちとのふれあい

 アイガモ農法を始めてからは、毎年小学生を田んぼに招いて、放鳥体験を行っています。可愛い雛のぬくもりを肌で感じて、命の尊さを実感してもらいます。初めて持つ雛に、戸惑いながらも優しさやワクワクする気持ちを、感じているのが見て取れます。田んぼに放たれたアイガモは、子供たちの声援に応えて元気に泳ぎ回ります。その後も子供たちは、生き物観察や写生に来てくれます。

  「おはようございます」「こんにちは」と、子供たちが元気に挨拶をしてくれるようになりました。私や田んぼに関心を持ってくれているとのだと思います。一人でも多くの子供に体験してほしいと思っています。

 先日、近所のおじいさんから「吉村くん、孫がお世話になっているのぉ。良いことをやってくれて感心するわ」と言われました。地域の方も環境や有機農業に関心をもってくれている証拠と嬉しく思っています。

田んぼや川の生き物を守る

 平成17年、三方五湖の汚染は落ち着いてきましたが、今度は湖固有の魚「ハス」が絶滅寸前の危機にあることがわかりました。そこで、ハスの棲める環境を取り戻そうと集まった人たちで、環境ボランテアグループが結成されました。私は農家として参加し、最初の3年間会長を勤めさせていただきました。

 私達は、町内に唯一残っていたメダカやドジョウが泳ぐ萱田を複田し、古代米の赤米を作ることにしました。子供たちや地域の人に呼び掛けて、有機農業で田植から稲刈りまでを行いました。妻も友人と一緒に、たくさんのおにぎりを作ってくれました。

 みんなの協力で、絶滅危惧種のミズアオイなどの植物が見られるようになりました。未だ「ハス」の姿は見られませんが、最近小学生の熱心な仲間も増え、その成長ぶりを見るたびに、環境活動の後継者登場に頼もしさを感じています。

お米や野菜を直接販売

 完全無農薬・無化学肥料で作った大事なお米は、JAS有機の認定を受けました。最初は有機米を扱う業者に販売しましたが、「直接食べる人に買ってもらい、感想を聞きたい」と思い、定年後習い始めたパソコンでラベルやちらしを作って、あちこちのイべントへ行きました。会場では、お米を試食していただき、一人一人に栽培方法を説明して、有機農業への理解に努めました。おかげさまで、「吉村さんのお米は本当においしい!」と評価を頂き、食味検査などでも良い数値を出せるまでになりました。

 まじめに作った作物を、気持ちを込めて販売できることは幸せなことです。「おっちゃんまけといてや」、「気張って作ったんや、これででこらえてや」「ほな次もこうてやぁ」こんな楽しい会話にも、地産地消の意義を感じます。

 我が家の農作物をいろんな形で食べてもらいたいと思い、近くの加工グループで味噌を作ってもらいました。4年前には、研修会で知り合ったお菓子屋さんにお願いに行き、ジャムを作ってもらいました。また、今年はネットで調べた県外の有機農場で、有機米のせんべいを作ってもらいました。自分でつくる加工品は梅干で手一杯ですが、いろんな方と繋がって出来た良い商品を、多くの方に食べてもらいたいと思っています。

「あいあいの里だより」やHPで情報発信

 妻は、手書きで「あいあいの里だより」を作っています。あいあいの里とは、私の住む相田地区の"あい"と、アイガモの"あい"を掛け合わせたものです。「赤米の穂が、見事な紅葉になってきました」「アイガモ達は、毎日元気いっぱいです」と刺し絵を入れて、作業中に気づいたことや、田舎の風景など色々なことをお知らせしています。

 ホームページも、田植えの様子や田んぼの生き物、赤米の食べ方など画像を入れて作っています。慣れないパソコン作業のためなかなか更新出来ないのですが、少しでも多くの方へ取り組みをご紹介できればと思います。

田舎を一緒に楽しんでください

 我が家から田んぼを眺めると、田んぼの向向うに川や山が広がっています。その中を時たま1両の電車が走る風景は、都会にはない素晴らしさがあると思います。訪れる方にこの風景をゆっくり味わってもらいたいと思い、我が家の軒下にベンチを備え、毎日畑に咲く花を飾り、自家生産のお茶でささやかなおもてなしをしています。神戸からご家族来られた時は、近くの川で川遊びをしてもらい、大変喜んでいただきました。

幼稚園児に届ける米、届ける想い

 一昨年の秋、有機JASの監査で書類作成に手間取り、せっかくの新米が2ヶ月間販売できませんでした。その分の米が売れなくて困っていた私に、有機の仲間が「幼稚園が有機の米を欲しがっている」と、紹介してくれました。すぐに話がつき、子供たちが給食で食べてくれることになりました。

 配達も慣れた頃、「子供たちにお米の話をして下さい」と頼まれました。田んぼの生き物が米づくりにどれだけ役に立っているか分かってもらいたいと、妻が模造紙に色紙で稲や生き物を貼り、それを見せながら話をしました。「ミミズやカエルのおかげで、お米ができるんだよ」と話すと、子供たちは熱心に聴いてくれました。

 翌年は、クラスごとに話して欲しいと頼まれました。今度は子どもたちが元気に育って欲しいと思い、朝ごはんの大切さをテーマに、一週間通って話しました。毎回手作りのパネルを見せながら話した後、「朝ごはんをしっかり食べてくれるかなぁ?」と質問すると、「ハーイ」と元気な声が返ってきて、本当に嬉しく思いました。

頼もしいパートナー妻の春子さん

 最近うれしかったことは、妻の春子さんが田んぼの雑草で悩んでいる私に、動力除草機を買ってくれたことです。毎年少しずつ機械や設備を充実させていますが、なかなか買えなかったものです。「私は田んぼに入る重労働はできないから、私の小遣いであなたが少しでも楽が出来るようしてあげる」と買ってくれたのです。おかげで今年は、全部の田んぼをこの除草機で対応できました。

 妻は友達を誘って、我が家で毎月一品持ち寄りパーティーをしています。季節の野菜や山菜料理に「これおいしいわぁ」「どないして作ったん」と食べ物談義に花を咲かせます。新鮮な野菜をおいしく味わうことが出来、私も楽しみにしています。

 こんな妻への感謝を「おいしいお米づくり」に込めたいと思っています。

有機農業の仲間を広げたい

 「有機農業の全国大会を県内で開催するから協力して欲しい」と、先月親しい方からお電話を頂きました。早速、会合に参加すると、熱心に有機農業に取組んでいる方が集まっておられました。志を同じくする仲間と話し合えることは大変嬉しいことです。こんな機会を頂けたことに感謝して、積極的に参加したいと思っております。

 近い将来、農園の感謝祭をしたとい思っています。お付き合い頂いている方々に感謝の気持ちを伝え、交流の場をつくり、自然を愛する活動が少しでも広がっていくことを願っています。